平成12年度研究開発実施計画書(文部省指定研究開発学校)

1 研究開発の実施期間 指定を受けた日から平成15年3月31日まで


2 研究開発課題

  21世紀を心豊かに生きる地球人を育てるため、生きる力の育成を教育の課題とする「学びワールド」の拡大を目指して。


3 研究開発課題の設定理由

 本学では、附属小中学校間における連絡進学が停滞し、附小卒業生のうち附 中に進学する者が50%未満の状態にある。その状態を改善するためにも、両 校の間で従来の連携を超えて、教育課程や研究推進における一貫性を追究していこうとしている。さらに、有力進学校である複数の私立中等学校の存在が大きく、対抗できるだけの努力と本校独自の特徴を備えることが必要とされている。そのため、附属幼小中学校の12年間一貫教育(併設型)を実現し、幼児 児童生徒の全人格的発達を教育課題とする『真の学び舎としての合校』の実現 に努力しているところである。ここでいう『合校』とは、従来の教室を基本的学習スペ−スとする「学校」の枠にとらわれない学習フィールド(ワールド)の拡大と共に、学びを通しての認知の世界(ワールド)の拡大を試みる『学び舎』のことを指している。また、「学びワールド」とはここでいう学習フィールドと認知の世界を示している。そこで、本校は「マルチメディア活用学校間連携推進事業」の推進校(平成 11〜14年)として、マルチメディア技術や高速回線を用いたテレビ会議システムの大画面の動画像やインターネット等による多様な学校間連携(全国約 600校)に取り組もうとしているところである。このシステムは、研究次第によっては、学校間を超えて、日本国内はもとより、世界にまで手を伸ばせる可能性を秘めている。このことは、世界中の多くの地域の事物、事象を、いながらにして学習フィールドにできることを意味している。  生徒が生きる力を獲得していく学習環境において、ガイダンス機能の充実が 求められている。そのため、生徒の学習を支援する場合、カウンセリングマインドに基づく指導を基盤とすることが重要になってくると考えている。今後、研究開発学校の指定を受けることによって、21世紀を舞台に国際社会で通用する人材を育てようとするとき、そのための全人格的発達を保証できる『真の学び舎としての合校』とはいかなるものか、ならば学校や教育課程はどう改革されていくべきかを具体的に吟味し、そこからさらには将来訪れるであろう教科の再編はどうなるかについても研究を進めたいと考え、本研究開発主題を設定することとした。


4 学校の特色

[学校の概要]

 生徒は、附属小学校と高知市一円の公立小学校から入学し、保護者が師弟の 教育にかける期待は大きい。教育目標「人間性豊かに生きる力をもった生徒の 育成」の具現化を目指し、教科の学習のみならず、生徒会活動や部活動、体験 学習(沖縄現地学習)やメディア学習など、学校生活全般において、生徒の自 主性と自立性を高める教育課程の実施に努力している。

[研 究 歴]

 昭和32年〜36年に「『道徳教育』の実践的研究」に取り組み、本県にお ける道徳教育の先駆となった。 昭和39年から「学習の能率化」を、また、昭和45年から「改訂指導要領 の実際的研究」の研究発表を行い、これらの成果をもとに、昭和48年から「指導法とその評価」の研究に取り組んだ。 昭和52年からは「意欲を育てる学習指導」をテーマとし、現在の評価の観点『関心・意欲・態度』につながる研究を進めた。昭和62年からは「自ら課題を求め追究する生徒の育成」をテーマとし、生徒相互のかかわり合いを支援し、主体的に学習できる生徒を育成しようと考え、「個を生かす指導法の工夫」「個を支える場の育成」「相互評価」などについて研究実践を重ねた。 平成11年度からは、本校の教育目標を「人間性豊かに生きる力をもった生 徒の育成」とし、研究の主眼を教科指導(選択教科)と総合的な学習の時間においている。また、本校は「マルチメディア活用学校間連携推進事業」の推進校として、テレビ会議システムなど各種メディアによる多様な学校間連携(全国約600 校)に取り組むことになっている。さらに、附属幼小中学校間において、教育課程や研究推進における12年間の一貫教育(併設型)を実現し、幼児児童生徒の全人格的発達を教育課題とする『真の学び舎としての合校』の実現を目指しているところである。


5 研究計画等

(1)研究のねらい

 新学習指導要領では、「生きる力」の育成が最重要課題となっており、新設される「総合的な学習の時間」はもとより、各教科においても、「生きる力」の育成を根底にすえた指導が求められている。しかし、現在の中学校における教科指導は、教科内容の細分化,分業化が進み教科として学校教育目標の実現や生徒一人一人の人間形成に果たす役割がうまく機能していない場面も見受けられる。そのため、再度それぞれの教科の特性を生かした生徒の「生きる力」の育成を根本から考える必要がある。また、「総合的な学習の時間」などの教科外の教育活動との連携を計画的に組織し、教える側の論理だけでなく、生徒一人一人の成長を見据えた上での教科の融合再編も考えていかなくてはならないだろう。本研究は、以上の課題をふまえて「学びワールド」の拡大を次のように考え実行しようと計画した。

 「学びワールド」と、その拡大

 「学びワールド」とは、一人一人の生徒の「学び」についての要素を「学習フィールド」と「学びの認知の世界」の二つに分け、その二つの要素から拡大する世界(領域)を「学びワールド」と名付けた。次にその説明図を示す。

ア 「学習フィールド」の拡大への試み

 a インターネットの活用による学習フィールドの拡大

 本校のインターネット(ネットワーク)環境は,本校教官による独自の技 術と,高知大学と高知県教育ネットにそれぞれ独立して接続された高速専用 回線を独自に2本備えている。また,生徒用コンピュータはコンピュータ室 に40台無線LANを活用したノート型が20台計60台を有する。この環境は県下屈指のものであり,その活用も日常化しつつある。これらの環境を教科・選択・総合的な学習の時間・生徒会活動などで活用することによって学びのフィールドの拡大を試みている。本研究では,さらに有効な活用方法を模索し実践していきたい。現時点での具体的な取り組みの一つとしては,沖縄県那覇市立神原中学校とのTV会議を通してのネット交流が本年度11月に計画されている。

 b 体験学習による学習フィールドの拡大

 現時点の本校の体験学習としては,一年生の室戸宿泊体験学習,二年生の沖縄宿泊学習が挙げられる。特に沖縄宿泊旅行では,ガマでの暗闇体験や嘉 手納町でのフィールドワークと地元の方からの聞き取り調査を行う。この企画は嘉手納町の大地を自分の足で歩き、その空気や地元の方の心を肌で感じることを目的としたものである。このような学習の場の拡大を生徒に提供していく必要があるだろう。ただし,闇雲に遠くの地域との接触のみにとらわれず,本校の生徒の実態に即した学習フィールドの拡大をはかりたい。

イ 「学びの認知の世界」の拡大への試み

 学びの認知の世界とは,学び取る力が広げる領域(世界)のことを示す。同じ事物,体験,現象に遭遇しても,この学び取る力が育っていれば,その世界はさらに広がり新たなる可能性を生み出すものとなるであろう。その考えのもとに,学習の場(フィールド)の拡大のみに目をとらわれず,全領域での学びの認知の世界の拡大を試みたい。以下に本校で考えている学びの認知の世界を広げるためのいくつかの取り組みの例を示す。   

 a 仲間づくり(学級づくり)や心の教育の充実 (学級経営・同和・道徳等)

 b 各教科での基本的な学びのスキルの定着 (教科・学習の手引きの作成)

 c 課題解決能力の育成  (教科,選択授業,総合の連携) 

 d 全領域に関わる要素の抽出と新教科の開設 (新教科としてのコミュニケーション科の設立)

 上記の取り組みの例の内,不十分ではあるが今まで本校が取り組んできた要素としてa〜cまでが挙げられる。この領域への取り組みの更なる質の向上が要 求されるであろう。これらの取り組みの中で,一番問題となったのが,それぞれの領域がその目標達成のために求められる力を,各領域があまり連携をはからず生徒に求めていたことであった。総合的学習の時間では,1年生で必要とされる力を培おうと計画し試みもみたが,一年生の総合的な学習の時間の中身は本来の意味での総合的な学習の時間ではなくなってしまう傾向も感じた。そこで,従来の教科 や総合的な時間をサポートし,その教科そのものも新たなる世界を生み出せる 教科を作ってはどうかと考えた。それが,d の案である。

  ・新教科コミュニケーション科(コミュニケーションワールド)の開設へ向けて

  我々は,本校生徒の実態や各領域から求められているものの一つの要素として「コミュニケーション力」を考えた。現在あまりにもありふれた言葉となっているこの要素が,多くの場面で求められ,その力の有無が,認知の世界を広 げられるか否かに関わっていると判断した。そこで,本研究を進める中で,求 められるコミュニケーション力の要素を抽出し,3年間を通してのよりよいカリキュラムの編成に努力したい。現時点では,その教科の名称は「コミュニケーション科」もしくは「コミュニケーションワールド」としておく。

ウ 前記2要素の接点としての総合的学習の時間「地域未来学習」の位置づけ

 本校の総合的な学習の時間の流れは,3年間をかけての学年発展型を基本とする。その理由としては,これまでの本校の研究は,心の教育・自己教育力・個と集団のかかわり合いの流れの中に、これからの社会に求められる「生きる力」を先取りしようとした取り組みであった。しかし、それぞれの過程で求め た要素は、個々の生徒の成長においては、断片的で統合されていないものとなっていたという反省がある。そこで一人の生徒の成長にあわせた流れを意識した学年発展型の総合的な学習の時間の設定を試みている。 その内容は,1年生では,仲間作りから始まり,安定した学習環境を築き,基本的な学び方を学び,その学びのスキルから表現活動へと発展させることが大切であろう。また,SETでの調査項目で1年生の弱点と見られる「生活」の領域を補充するためにも計画的に体験学習を仕組むことも大切だと考えた。具体的には「室戸体験学習」を中核とした取り組みを計画した。2年時には,一年時に培ったスキルの実践の場と位置づけ「沖縄宿泊学習旅行」を中核とし,那覇市立神原中学校とのネット交流や嘉手納町での聞き取り調査を通して生きた体験活動の場を設定した。3年時には,今まで培ったことを,視点を足下の「高知」に戻し,「学びのメタ認知」として,再び地域を見つめ直す設定とした。このことは,物理的な世界の広がりだけにとらわれるのではなく,認知の広がりこそが「学びワールド」の拡大につながるという考えから設定された。その取り組みの中では生徒の意志で課題を見つけだすというプロセスを最も大切にした。

 この3年間の流れを通して「地域未来学習」とネーミングされた本校の総合的学習が構成されている。次にそのイメージ図を示す。

(2)実践内容と方法及ぴ評価等

 @ コミュニケーション科の編成に向けて

教科として成立する条件の整備

  (ア) 各領域から求められるコミュニケーションカの抽出

  (イ) 具体的カリキュラムの編成(目標・内容・教材)と担当の決定

  (ウ) 教科書及び副読本の成立

  (工) 評価方法・評価項目の検討

  (オ) 他領域との効果的な連携

 A 総合的な学習の時間の有効な活用と,他領域との連携

  (ア)「学びワールド」の実践の場としての環境整備

  (イ)コミュニケーション科との連携、すみ分け

  (ウ)コミュニケーション科の成立と共に、内容の再編

 B 附属幼小中との接続カリキュラムについて

 附属三校の連携のフレームワークは、現在大学を含める中で進められている。しかし、最終的な教育内容での有機的連携に向けては、まだまだ多くの課題を抱える。現在連携研究のための環境整備としては「小津イントラネット」を附属三校の協力でなしとげ、ネットワークを使っての日常的交流が図れる環境は整備できている。詳しくは本校ホームページに掲載されている。

URL http://ozu.cc.kochi-u.ac.jp/~fuchu

 また、大学・附属全体での共同研究も昨年度より始まっている。

  (ア)コミュニケーション科の内容の中に幼小との交流を位置づける

  (イ)ネット環境を最大限に活用し、交流を日常化する

  (ウ)最終的には、三校が連動したカリキュラムの再編に向かう

(3)研究計画

年  次

研  究  内  容  等

第1年次

1.研究目的や課題の具体化

検査等を通して生徒の実態を多面的に把握し、育てる生徒 像を明らかにする。

2.新学習指導要領[各教科]の教育内容の分析と検討

 (1)9教科の目標や指導事項を調査し、教育内容の関連性を明らかにする。

 (2)総合的な学習の時間「地域未来学習」の実施を行う。

3.マルチメディア技術や高速回線を用いた、大画面の動画像による遠隔授業など、多様な学校間連携を推進する。

 (1)「学びワールド」におけるマルチメディア領域の位置づけ

 (2)地域未来学習での活用とその位置づ

 (3)学習形態

   @ 遠隔授業

   A 共同学習・交流学習 (那覇市立神原中学校との間で実施決定)

4.第1年次カリキュラム案の作成(第1・2学期)

 (1)各教科の教育内容の検討

 (2)「地域未来学習」のカリキュラム案完成と実施  (5月より実施開始)

5.11月18日に本校研究発表会にて「地域未来学習」と「マルチメディアの活用」を主体とした発表を行う。

6.「コミュニケーション科」の新設に向けて、各領域が求めるコミュニケーション力の抽出と、教科として成立するため の条件の整備にかかる。(研究大会後より)

7.第2年次カリキュラム案の検討

第2年次

1.コミュニケーション科の開講に向けて

 (1)年間カリキュラムの作成(目標・内容・教材)

 (2)他領域との関連

 (3)評価・評価項目案の作成

2.第2年次カリキュラム案の作成

 (1)新教科コミュニケーション科を一学期中盤より実施予定

 (2)教科・コミュニケーション科・総合的学習の時間・選択教科の学習内容・履修方式の再検討

3.第2年次カリキュラム案の実施と結果の分析

 (1)実践とデータ収集

 (2)有効性の検証と最終年次への課題を明らかにする。

4.新小学校学習指導要領[各教科]並びに総合的な学習の時間(附属小)における教育内容の理解

 (1)教科の目標や指導事項の調査

 (2)附小における総合的な学習の時間の教材配列を理解し、本校地域未来学習との関連を見いだす。

 (3)本校コミュニケーション科との連携の可能性を見いだす

5.第3年次カリキュラム案(新教科による枠組みづくり)の作成

第3年次

1.新教育課程の編成

 実践結果より改善の加えられた「学びワールド」「地域未 来学習」を中核とした学習内容の構造化及び年間指導計画を作成する。

2.新教科の実践及び検証

 (1)学習内容について、現行の学習指導要領との相違点とその内容を明らかにする。

 (2)新教科の学習事項について、指導の手引きの作成やテキスト化を図る。

 (3)通知表の比較検討 ,評価・評定方法を明らかにする。

3.教科の再編に基づく新教科課程の可能性と問題点のまとめ

(4)当該年度の教育課程の内容

   初年度の教育課程(授業時数)の内容

   ※ コミュニケーション科は2年次より実施予定

 

  ア 各教科の時間数は前記のとおりである。

  イ この表の授業時数の1単位時間は、50分として考えている。

  ウ 特別活動の時間数は、学級活動の時間数のみに充てる。

  エ 新教科については、模索の一年とし、2年次より実践を試みる。

(5)全課程の終了の認定の要件 (最終年度の教育課程の内容)

 ア 教科複合単元の設定

  a コミュニケーション科(内数として35時間確保)

  (表現活動などのコミュニケーションに関わる内容を抽出した教科。発信のみならず、受け入れる心も培う教科を目指す。)

  b 人間科(道徳・特別活動)

 イ 各教科の授業数は以上の通りであるが、新教科等の開設もあり、実質的に は流動的である。